ブラック企業が好んで導入する固定残業代
固定残業代とは、月の残業時間をあらかじめ企業側が設定し、労働者がその時間分残業したかどうかに関係なく支給される手当のことです。固定残業代を正しく適用するためには、企業の就業規則や規約などに固定残業代について明確な記載があり、労働者側もそれに合意している必要があります。また、残業時間が定められた時間を超過した場合、企業は差額分の残業代を支払わなければなりません。この固定残業代を正しい形で運用している企業と、悪用しているブラック企業があるので労働者は注意が必要です。
固定残業代は、ブラック企業の悪質さをさらに助長させる要素のひとつになることがあります。固定残業代があることによって、長時間残業と残業代未払いという最悪の状況下でSEとして働いている人もいることでしょう。固定残業代とは、基本給にあらかじめ一定額の残業代が含まれているもので、本来であれば固定残業代の対象となる残業時間も明示されているべきものです。しかし、実際にははっきりとした残業時間を明示せず、固定残業代の範囲を超える残業時間があると知りながら、超過分の残業代を支払わないという企業もあるのです。むしろ、固定残業代の存在を盾にして、残業記録も残さず長時間労働を課すこと常態化し、それが当たり前のことと労働者にも誤解させたままという企業も多く、悪質な企業の実態がなかなか表面化されないという状況が生まれてしまうのです。
固定残業代そのものは、正しく運用することができれば問題ありませんが、残業代が割増しになる休日や深夜なども含め、超過した分を毎回計算するのは手間がかかり、正しく運用しようとすると管理コストはそれなりにかかってしまうので、企業側にとって固定残業代をわざわざ導入するメリットはあまりありません。むしろ、残業がなくても毎月残業手当が支払われる労働者の方にメリットがあるのが、本来あるべき固定残業代です。
支払うべき残業代を一切支払わず、不当に人件費を削減している企業と、適正に残業代を支払っている企業同士が価格競争しなければならず、真面目に残業代を支払っている企業が不利な競争を強いられてしまいます。その状態が続けば、サービスや製品の質の低下にもつながってしまうので、経営状態が悪循環に陥ってしまうかもしれません。そのような状況を打開するには、まず労働者側が固定残業代の有無や運用実態について知り、ブラック企業かどうかを自己診断することが大切です。違法に経営を続ける企業を労働者が避けるようになれば、ブラック企業の繁栄を阻止することにつながるかもしれません。